小規模自治体らしさを生かして、震災復興とその支援に取り組もう

jichitaiforum2011-05-18

5月14日、15日長野県阿智村で開催した「大災害に小規模自治体はどう立ち向かうか 緊急フォーラム」で採択した参加者アピールは以下のとおり。


 3月11日に起こった日本史上最大の大地震は巨大津波を伴い、東日本沿岸部を中心に甚大は被害をもたらしました。さらに3月12日未明に起こった長野県北部地震は栄村などを襲いました。地震津波福島第一原発を襲い、原発震災はチュルノブイリ級の大災害となり、いまだ収束の目途がたっていません。なお、大量に発生した瓦礫処理等においてアスベスト飛散による二次被害も懸念されます。
 被災した地域には小規模自治体が多く、多くの住民の人命が失われ、安否確認もままならない状況のもとで多くの避難者が極限の生活を余儀なくされています。このたびの大災害は自治体機能、生活サポート機能を著しく傷つけました。役場庁舎・病院・福祉施設などの公共施設が失われるとともに、自治体職員も多く犠牲になり、住民の生命と安全・安心を保障することが困難になっています。そのなかで被災自治体では懸命の努力が行われています。一方、今回の大災害では多くの自治体・住民が被災地を支援するとともに、避難者を受け入れました。
今回の緊急フォーラムでは被災地自治体と支援自治体の両者からの報告をもとに被災地支援や復興のあり方を議論しあいました。そこから明らかになったことは、四つあります。
 第一に、大震災の経験をつうじて集落とコミュニティの重要さを思い知らされたことです。農山漁村の点在する被災地では住民は狭域コミュニティを基盤に、農林漁業や商工業などを営みながら暮らしていました。「昭和の大合併」前の町村より狭い範囲の集落は、大きな被害を受けながら住民の強固な結びつきを基盤に助け合い、避難生活を耐え抜き、復興に向けたよりどころとなっています。
第二に、基礎自治体の大切さ、特に小さなコミュニティに手の届く小規模自治体の存在意義をあらためて確認することができました。復興に大切なのは地域コミュニティであり、地域への愛情です。小規模自治体ほど住民との距離が近く、地域コミュニティに根ざしたきめ細かな避難、復興計画づくりが可能になります。そのことは、放射能という見えない脅威のなかで住民による話し合いを幾度となく続けながら、住民の安全とともに安心を保障するための避難と復興のあり方を追求する飯舘村の懸命な努力に見ることができます。また、自ら被災しながら400人を超える避難者を受け入れている大玉村の取り組みや、約2000人の避難者を受け入れた川場村をはじめ利根・沼田地域の自治体の取り組み、約100人の避難者を受け入れた南信州広域連合に属する自治体の取り組みは、小規模自治体をはじめ基礎自治体の存在意義を示しました。
 第三に、自治体間の日常的な交流にもとづく横の連携が求められていることです。被災地を支援したり避難者を受け入れたりしている自治体においては、従来の災害救助法の枠組にとわられず、つながりのある被災自治体に対して自主的な救援・支援を進めています。今回報告された、福島県南相馬市南信州広域連合に属する市町村との連携を考えるとき、自治体間の日常的な交流を基礎とした自主的な支援が大切であるという思いをつよくします。
 第四に、今回の震災・原発事故によりエネルギーの面や食料や水の面などにおける農山漁村地域の役割がクローズアップされ、本フォーラムの会がこれまで主張しつづけてきた農山漁村と都市との相互依存関係が裏付けられたことです。
 以上の点を確認するとともに、災害時における基礎自治体の役割に関連して3つの点を指摘しておかねばなりません。
一つは、公共部門の縮小・統合を進めてきた一連の改革が大震災による被害が拡大した原因となっているという点です。市町村合併推進により大合併した地域では周辺部の旧町村において震災後の救援、復旧が遅れたといわれています。交付税削減は沿岸部の自治体財政を直撃し、役場は職員削減を余儀なくされました。平時から職員体制に一定の余裕がなければ災害時に有効な対応が困難になるのです。国は震災を教訓に公共部門の縮小・統合政策を見直し、基礎自治体の体制拡充のための財源保障を行う必要があります。特に被災自治体に対する特段の支援を行うべきです。さらに、地域間の相互扶助を前提とした地方交付税の役割を強化するべきです。
 二つ目には、震災を口実に市町村合併道州制を進めようという動きがあることです。それは、集落コミュニティを基礎としながら被災地の住民の生活と生業の復興をめざす、現存する基礎自治体の役割を否定するものです。同時に、コミュニティや地域への愛着という灯をもとに村や町の復興を願う小規模自治体の住民の心を壊してしまい、避難してきた住民を受け入れている避難先住民の努力や思いをも無視するものとなってしまいます。小規模自治体における住民・コミュニティと役場の顔の見える関係こそが住民本位の復興にとって大切であることが強く認識されなければなりません。合併によって小規模自治体の解消を図ったり、府県を越えた広域連合や道州制をめざすことにより府県の小規模自治体への補完機能を低下させたりすれば、住民・コミュニティを基礎とした復興に著しい困難をもたらすことは明らかです。
 三つ目は、避難や復興のあり方について、基礎自治体や地域コミュニティの自己決定権を確立し、集落計画や市町村の計画づくりなどを自己決定できるように国や県が必要な情報提供やサポート、財源保障などをしっかり行うことの重要性です。このことは原発事故にかかわる避難や復興のあり方にも当てはまります。


 小さい自治体として私たちは何ができるのでしょうか。まずは被災地の住民の状況を知ること、自治体と住民の災害との格闘を知り、心を寄せることが前提です。そのうえで、被災地自治体を支援するあり方は様々です。小規模自治体と住民はすでに被災地への支援、被災者の受け入れにおいても、自治体間の横のつながりを生かして被災地・被災者のニーズに応じたきめ細かな取り組みを行っています。それは小さなコミュニティに手の届く小規模自治体だからこそできる取り組みなのです。これから、被災地自治体と住民の現状を理解したうえで、「お互い様」の精神で、助け合いの心を発揮し、息の長い取り組みを進めてまいります。

                     2011年5月15日
                     全国小さくても輝く自治体フォーラムの会
                     緊急フォーラム参加者一同