地域力創造と地域おこしのヒント連続10時間講座in山梨、その2

 連続10時間講義といっても、椎川自治財政局長が10時間話すことはなく、昨日紹介したように、岡本自治大学校長や菅原氏、安田先生などがそれぞれ1〜2時間程度講演する企画。その枠の一つに、地元山梨の市町村の地域おこしの事例紹介として、以下の3つの報告があった。
甲州市からは「まち歩きでまちづくり」と題して、フットパスの取り組みについての報告。これまでは、名所旧跡やワイナリーを、点から点を車で巡るものだった。これに、市民のおもてなしとして生活文化に触れていただくために、「まち歩き」コースを用意し、快適な歩くしくみとしてフットパスの仕組みを作っているという。準備として、住民といっしょにまちを歩き、近代産業遺産、ブドウ冷蔵庫や廃線、商家など新たな地域資源を見つけた(国交省の補助事業を活用)。まちの魅力を伝える「まちのソムリエ」を募集し、養成講座を開いている。
北杜市からは、「連携による地域おこい」と題して、愛媛県伊予市との「連携」について報告があった。ひとつは、08年度の小浜市との食育をテーマにした地域力創造アドバイザー事業を「継続」し、北杜市でも食と農の杜づくりに取り組んでいる。北杜市の農産物直売センターと、伊予市の特産品センターをモデル事業として、商品(北杜市には海がない)の相互販売をしている。ふたつは、横浜商科大学の学生との連携で、月一回、農体験をしている(ダッシュ村ですね)。
 昭和町からは、地区担当職員制度の紹介。まだ準備中(10月1日実施予定)だと断っての報告だった。甲府市に隣接しており工業団地もあって財政が「豊か」なこともあって、「小さくてもきらりと輝くまち」をめざし、自立を選択した。町内12地区で、地域の人たちが主体的にとりくめるまちづくりのために、ア)この4月から複数の補助金を整理統合し交付金化した、イ)10月から職員(係長級2人ずつ)を地区担当とし、地区の会議に出席する。ウ)中期的な目標として、身近な環境整備などについては、権限と財源を地区にうつす、ことになるという。人口1万7000人で、一般職100人程度の役場で、24人の係長が地域にでる。「係長会議」を定例化し、地区の会議で出た課題を検討し、再び地区の会議にフィードバックするという。

 甲州市ではフットパスという「手段」を通じて、市民との協働で歴史文化を守り、地域の活性化に結ぶ努力がはじまっているように感じた。じっさい、市内(甲州市というより勝沼といったほうが通りがいいかな)ワイナリーが協力を始めたり、民家の縁側を開放している住民がいるようだ。地域交流センターが仕掛けた「まちの駅」を思い出す。「仕掛け」に応えて、自らのこととして行動に移す住民の存在が、ある意味うらやましい。北杜市は道半ばの感をうけた。モデル事業はそれぞれ1箇所であり、これが他の地域や集落に広がっていくのだろうか。昭和町も、じっさいに動き出すのはこれからだが、地区担当制度の先行例も多く、比較的都市型で、地元の方と新しい方の混在するまち(工業団地の関係もあり、外国人も多いという=地区の人の視野にははいっている)ならではの取り組みが期待したい。
 局長とか研究者の講演・講和もいいのだけれど、やはり現場の実態には学ぶものが大きい。今回の3人の報告者も、年齢も比較的若く、つっかえつっかえせずある意味堂々と報告していて、これも頼もしく感じた。