総会アピール

 設立総会で採択されたアピールは以下のとおり。

「全国小さくても輝く自治体フォーラムの会」発足総会アピール
  2010(平成22)年5月29日
  「フォーラムの会」発足総会参加者一同

 鳩山内閣が唱えてきた「地域主権改革」の全体像が、「地域主権大綱(仮称)骨子案(試案)」として発表されました(以下、「骨子案」)。それによれば、地域主権改革の目的は、「国民や住民の現在、未来の決定権を、結果責任を負う国民や住民が有するようにする」、つまり主権者たる国民が自らの住む地域をつくる責任を持つための改革と位置づけています。そして、「基礎自治体がより自主的かつ総合的な行政主体としての役割を担えるようにする」ため、基礎自治体への権限移譲やひも付き補助金の一括交付金化が提案されています。他方、原口総務大臣は、日本経団連との協議の場において、「地域主権戦略大綱の中に道州制の議論を盛り込み、来年の法案につなげたい」と言明し、道州制導入論議を積極的にすすめようとしています。
 地方分権改革は時代の流れでもありますが、それには基礎自治体である市町村が権限と財源とを保障され、同時に、小規模自治体に対する都道府県や国による適切な補完がなされなければ、真の分権改革とは申せません。その点で「骨子案」は、市町村に対する財源の保障について、「(配分の)客観的指標を導入する。また、現行の条件不利地域等に配慮した仕組みを踏まえた配分とする」という一項を挿入していますが、これまでの「平成の市町村合併」や「三位一体の改革」によって、都市対農村、東京対地方の格差が極限まで拡大している今日、そうした深刻な格差を是正する方向と、いずれの地域に住んでいても憲法で保障された文化的な生活と個人の社会権とを保障できるだけの制度的裏打ちがなされているでしょうか。また、全国町村会も反対するように、道州制の導入は、小規模自治体やそこでの住民の生活基盤そのものを破壊することにもつながりかねません。
 本年3月末で市町村合併策はひとまず終止符を打ちましたが、町と村が面積的にはなお国土の半分弱をカバーし、とりわけ山や川、海と緑を守っています。しかも、これまで14回開催してきました「小さくても輝く自治体フォーラム」(以下、「フォーラム」)に結集する小規模自治体は、自律(立)をめざして魅力ある自治体づくりに心をくだき、住民を主人公とする自治の精神に立って多くの改革を成し遂げてきました。今日、私たちは、「フォーラム」の輝かしい伝統の上に立ち、さらに小規模自治体の魅力を高める取り組みと交流を日常的に強化し、お互いに切磋琢磨するとともに、小規模自治体の存在意義を全国民にアピールしていくことを決意し、恒常的な会員組織を立ち上げました。
 私たちは、国土の均衡ある発展と国民・住民が等しく政治・行政の恩恵を受けられることを念願し、小規模自治体に暮らす住民が不利にならない自治体間財政調整制度の実現を求めます。また、こうした自治体がさらに住民自治の充実に向かって無理なく前進できるよう、都道府県の役割の強化を願うものです。
 本日の記念講演をお願いした小田切徳美先生は、「誇りの再建」を強調されました。いわゆる限界集落の問題が日本各地で取りざたされ、高齢者のみの集落も目立つ今日、私たちは、農山漁村を含めたすべての地域で、人々が人間らしく展望をもって生きられるよう、これからも地域の魅力を高めていくよう努力を惜しまないことを互いに誓い合いました。
 私たちのこれからの取り組みにぜひご理解、ご協力をお願いいたします。